>2019年度報告

主要研究員

 ・ 中山 雅晴(グループリーダー)

 ・ 吉田 真明

 ・ 遠藤 宣隆

Electrolysis Cell

 水素エネルギーは未来を担うエネルギーキャリアとして期待されています。その中には、多量のエネルギー貯蔵が難しい電力を水電解により水素に変換して貯蔵する技術が含まれています。再生可能エネルギーを貯蔵可能なエネルギーキャリアである水素に変換して貯蔵するものです。すなわち、再生可能エネルギーに将来のエネルギー源を置き換えるためには、安価で高効率な水電解技術の開発が必要となります。

NEDO水素エネルギー白書より

水電解には現在、アルカリ水電解法と固体高分子型水電解法、水蒸気水電解法などが主に用いられています。いずれの場合も予め精製した純粋な水に電解質を加えて電解する必要があります。しかし、天然の電解質である海水を利用できれば、安価な水電解が実現できます。

直接メタノール型燃料電池の模式図

しかし、一般に食塩電解では陽極から塩素が発生します。塩素は工業原料や滅菌などに使用されますが、塩素ガスは腐食性や毒性があり、必要に応じて生産量が制御できることが望ましいと言えます。燃料電池ではセル内における反応物質(燃料や酸素)の濃度の変化や物質の移動を調べて、燃料を無駄なくエネルギーに変換する検討が行われており、同様の手法で電解セルの中で何が起きているかを調べています。さらにその結果を元に、我々は電極触媒の反応性、電解槽の構造や運転条件を制御することで、塩素と酸素の生成量を制御することを目指しています。

Electrode

 天然の電解質である海水を電解して水素を得る研究に取り組んでいます。食塩電解はすでに実用化されており、山口県内の企業でも行われています。下図はソーダ電解工業で用いられる電解槽のイメージ図です。

日本ソーダ工業会ホームページより

食塩電解では、水素は陰極から生じます。同時に陽極からは塩素が発生します。熱力学的には酸素が発生するはずなのですが、実際には速度論的に有利な塩素が生じます。そこで、塩化物イオンが含まれる溶液でも選択的に酸素を生じる陽極の開発が必要です。

純粋な水の電解であっても、酸素発生には大きな過電圧が必要で、ボトルネックになります。そのため、安くて高効率な酸素発生用触媒が必要です。中山らは層状二酸化マンガンのナノ空間にコバルトイオンを閉じ込めた「シングルイオン触媒」が高い酸素活性を示すことを報告しています。これは酸素を効率的に生成する触媒につながる技術と考えています。

Operando analysis

 触媒反応が進行している状態を直接分析する「オペランド観測」は、電極触媒の反応メカニズムを明らかにする強力な測定手法です。吉田らは、X線や赤外線を用いた独自のオペランド測定装置を開発し、水分解触媒内の全ての元素の電子状態・構造を観測し、機能の解明を行っています。さらに、これらの分析装置で得られた知見を基にして、より高活性な水分解触媒の設計・開発を行っています。

 
 

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